いや~ とりあえず『VESPA 90Racer』の “軽整備” が完了したので
ご覧頂こうと思います。
整備の様子はこのブログに細かく記載しておりますので
今日は写真だけUPさせて頂きますね。
動画も是非ご覧下さい。
撮影が夕刻だったので少し暗いですが
夏の切ない夕暮れ時を感じて下さい(笑)。
(この動画はブログ限定です。)
写真や動画をご覧になればお分かりになるかと思いますが、外観はかなりヤレております。
その代わり配線をオリジナルで新設、各ワイヤーを新品に交換、足回りのOH、
ブレーキシューの交換、ポイント関連の電装系の引き直し、シルバーパーツのリペイント
フロント周りのOH&シャフトベアリングの交換、クラッチのOH、キャブのOH等々
元気に走る為の整備を重点的に行いました。
この『90Racer』は1971年~74年の間に僅か3315台しか生産されなかった
レア・モデルですからフルレストアしても良かったのですが、
実は外観をイジらずにヤレたままで仕上げたのには理由が有ります。
それを今からお話ししましょう。
この『VESPA 90Racer』は今から30年前の1995年の12月にレストアして
お客様に納車させて頂いたのですが、今から3年前の2022年の夏に
オーナー様から突然連絡を頂き、僕の元へ戻って来たのです。
ですがその時点で(2022年)27年も倉庫に放置されていた為、
錆、傷、穴、曲がりは勿論の事、配線とワイヤーの劣化等も有り、
スクラップ寸前の状態でした。
それでも27年経過して戻って来てくれた事をとても嬉しく思いました。
実は本物の『90Racer』ですから行方を気にしていたのですが
時間の経過と共に所在を追う事が困難になっていたからです。
もしかしたら解体されてしまったのかな? と半ば諦めてもいました。
そんな『90Racer』を今回 “軽整備” して乗る事にしたのですが、
実は軽い整備では現状回復しなかったので、機関はフルリビルトしました。
この辺りの流れはブログをご覧になって下っている方なら
お分かり頂けるかと思います。
ですが、何故外観をイジらなかったのかと言いますと、
この『90Racer』をレストアした1995年は僕にとって節目となる年だったからです。
当時、多数のバイク雑誌で記事を書かせて頂いたり、
海外出張も増え、お店も広い場所に移転したりと
29歳だった僕は充実した生活を送っておりました。
ですが、そんな中その年(1995年)の7月に育ての親と言っても過言ではない
僕の祖母が亡くなってしまったのです。
僕は諸事情があって6歳から祖母と二人で暮らしており、
ワガママばかり言って、迷惑もたくさんかけてきました。
ですが、ようやくVESPAの仕事が起動に乗り、
恩返しができると思った矢先の事でした。
しかも僕が1ヶ月のヨーロッパ出張中の急逝だったので
葬儀にも参列できませんでした。
今でも後悔しています。
ただ、祖母は忙しそうにしている僕に
『あんたは仕事を頑張りんさい。』といつも言ってくれていたので
今でも祖母の言葉を胸に仕事を頑張っています。
何だか、僕が独り立ちして生活できるようになったのを
見届けてから天国に行ってしまったような気がしました。
ですからこの『90Racer』をレストアした1995年は
29歳の僕にとって波乱万丈の年だったのです。
うまく言えないのですが、
30年前の自分の仕事に再度逢えた事を考えると
ボディの傷や錆も時間かけて歩んで来たシワや白髪と同じように思えてしまったのです。
あくまで主観ですがシワや白髪は人生の勲章ですからね(笑)。
そう考えると外観は波乱万丈だった1995年のままでいいかな? と思った訳です。
『90Racer』も僕らと一緒に歳を取った訳です。
格好良く言えばこの『90Racer』はタイムマシーンかな?(笑)。
29歳の自分に逢わせてくれる、ちょっと切ないVESPAだったりします。
もしあなたが30年前の自分に逢えるとしたら何て言いますか?
僕ならこう言います。『とりあえず髪は有る。ハゲてないから安心しろ』かな・・・(笑)。
ところでこの夏『90Racer』は『海の家』で『虫捕り号』として使う予定です。
[この夏『90Racer』は『フロントバッグ』と『虫かご』を搭載して
『虫捕り号』として頑張ってもらいます。]
ではでは・・・
今日もブログにお付き合い頂き有難うございました。